介護保険制度では、介護サービスを受けた場合、サービスを提供した事業者に対して、介護保険財政(国・地方・保険料など。)から9割を、残り1割を利用者が支払うことになりますが、この事業者に支払われるお金のことを介護報酬と言います。
この介護報酬は、サービスを提供した事業者からの請求に基づき支払うことになりますが、この請求に関する事務を一般的に 介護 事務 と言います。
介護事務について一口で言うと上記のとおりですが、実は、介護保険制度においては介護事務という言葉の定義はされておらず、上記はあくまでも一般的な使い方であることをご理解ください。
介護保険制度と介護事務
介護保険制度における介護事務の位置づけ
介護保険サービスは、介護保険法や関係法令に基づき提供しなければなりません。
遵守すべき主なものとして人員基準(サービスを提供するのに必要な人員を満たしているか)、運営基準(サービスの提供は適正になされているか)、施設基準(必要な施設・設備を有しているか)の3つがあります。
これらを全て満たしたうえで、サービス提供がなされた場合にはじめて事業者は介護報酬を請求できることになります。その意味で後述しますように介護事務は非常に重要な事務であると言えます。
サービス事業者の行う事務内容
上記の介護報酬を請求するという意味での介護事務に限らず、介護保険制度においてサービスを提供する事業者には、法令に基づき各種多様な事務作業が発生します。
例えば、人員基準においては必要な人員を満たしているかどうかを確認するために、出勤簿(タイムカード)や休暇処理簿を整備すると同時に、毎月の出勤状況の確認を行い、人員基準をチェックする必要があります。
また、人を雇用すれば労働関係法令に基づき社会保険加入等の手続きも必要になりますし、給料の支払い事務も発生します。また特別な資格を必要とする人を雇用する場合には、その資格を証明する書類等の確認も重要な事務になります。
次に運営基準では、利用者に対してケアマネージャが作成したケアプランどおりのサービスが提供されたかどうかを確認するための実績簿の作成や、例えばデイサービス等で送迎がある場合は車両の運行簿により利用者を把握する事務、食事提供がある場合は食事を摂ったかどうかの確認事務、入浴がある場合は入浴の有無の記録などの事務が発生します。
加えて、何らかの事故が発生した場合の対応記録簿、苦情処理関係帳簿、消防法関係の書類など事業所運営上の事務も発生します。
さらに、行政との各種連絡業務や行政が行う実地指導のための書類作成やその対応なども重要な事務になります。
介護報酬の請求事務としての介護事務の概要
介護報酬の請求事務、つまり介護事務は、これまで述べてきた事務のひとつですが、サービスの実績に基づいて介護保険財政という公金や個人へお金を請求するという意味で、サービス事業者にとりましては非常に重要な事務となります。
介護報酬については、介護保険のサービスごとに細かく要件と単位(金額のこと。1単位は原則10円。)が定められています。サービスによっては、その回数や内容により報酬が異なる場合や、加算という取り扱いもあります。
逆に、一定の要件を満たしていないサービスの介護報酬は、減算しなければならない場合もあります。いずれにしても極めて正確な事務処理が求められます。正しい介護報酬の計算はもちろんですが、付随して請求書や領収書の作成も必要になります。
医療保険において診療報酬を請求する「医療事務」がありますが、それとほぼ同じ意味合いで介護事務は使用されていると理解していただいてよいと思います。
介護保険制度における事務の重要性
介護保険ではサービスの提供実績に基づいて介護報酬を請求することになります。この場合、実績を証する書類等は、日頃のサービス提供に関する各種の事務作業により整備されるものです。
日頃どんなにすばらしいサービスを提供していても、それを証する書類等がなければ報酬請求ができない可能性があります。
介護保険制度における事務は、報酬請求事務としての介護事務はもちろんですが、日頃から全般にわたり適正な事務作業に努めておく必要があります。
まとめ
介護保険制度と介護事務
介護保険制度における介護事務の位置づけ
サービス事業者の行う事務内容
介護報酬の請求事務としての介護事務の概要
介護保険制度における事務の重要性