年金財政は納付人口の減少や未納率の高止まり、そして受給層の長寿化で、破たん説が常に囁かれています。そしてついに 年金 の受給開始年齢引き上げとともに実質的な 減額 が実施されることになりました。年金制度に未来はあるのでしょうか。
現受給世代の年金減額は将来世代への相続
マクロ経済スライドとは
本来、年金は物価や賃金の上昇や下落に連動して調整される仕組みになっており、これがマクロ経済スライドといわれるものです。しかしこの制度を導入した2004年以来、日本は長期のデフレ経済にあえいできました。
その結果物価は上昇せず、その状態のままマクロ経済スライドを適用してしまうと、年金支給額が下がってしまうため、物価スライド特例措置が適用され、年金額は数度の調整を経ながらある程度据え置かれてきました。
その結果、マクロ経済スライドを適用していた場合より7兆円もの給付過剰状態に陥ってしまいました。これに追い打ちをかけたのが少子高齢化の予想以上の進展です。そしてついに2015年、マクロ経済スライドによる調整がはじめて実施されることが決まりました。
すでに受給している世代にも影響
すでに年金を受給している世代の中には、マクロ経済スライドによって年金が削られるとはいっても、それは将来の世代の話と思っている人がいるかもしれませんがそうではありません。
対象は既受給者にも及びます。そればかりでなく、むしろ既受給者のほうが削られる率は高くなると言われています。理由は、マクロ経済スライドのスライド率を決定する基準が将来受給者と既受給者で異なるからです。
今後の受給者は名目賃金上昇率に応じて年金がいくら増えるかが決まりますが、既受給者の場合はそれが物価上昇率に応じて決まります。
普通、名目賃金上昇率は物価上昇率より低くなるため、その分、既受給者のほうが削減率が高くなるということになります。
現役続行による厚生年金の減額
年金の受給年齢に達しても定年延長や嘱託などで仕事を続ける人が増えています。しかし収入を得る能力がある場合にはその額に応じて年金が減額されることがあります。
これは在職老齢年金と言われ、60歳以上65歳未満、65歳以上70歳未満、70歳以上の3つの年齢段階ごとの減額設定がなされています。
60歳以上のケースで見てみると、仕事で得られる給料と受給する年金額の合計が28万1円以上になると年金部分が減額されます。その減額分は給料と本来受け取れる年金額がいくらか、によってあてはめる4通りの計算方法で算出します。
たとえば、本来の月額年金が28万円以下、月額給料47万円以下の場合には、月額年金と月額給料の合計から28万円を引いた額の半分が月額年金から引かれます。
仮に、月額給料が20万円で、本来年金が20万円なら、6万円が減額され、月額年金は14万円となります。それでも、合計の月収は34万円となりますので、年金だけの生活よりはるかに余裕があるとも言えます。
気を付けなければならないのが、これは「厚生年金」に関しての話だという点です。つまり定年以降も厚生年金への加入を継続する場合に限定されます。したがって、自営で仕事をはじめたり、厚生年金には入らない条件で仕事を続けられれば、影響はありません。
ただしその場合には、会社の社会保険からははずれるということに注意しなければなりません。つまり、国民健康保険に加入し、全額自己負担で保険料を払わなければならなくなります。また、扶養家族が60歳未満ならその分の国民年金の保険料も負担しなければなりません。
とはいえ、自ら稼ぎ収入を得ることは、日々のモチベーションにもなり、何よりひっ迫する年金財政を助けることになります。
子や孫の世代のために
相続税制度が改正され、それにともないいくつかの非課税措置が打ち出されました。これはひとつには、1,500兆円ともいわれる金融資産の大半をもつ高齢世代が、タンス預金状態で固定化させている資産を流動化させ、下の世代へと移転させることを狙ったものです。
その目論み通り、ジュニアNISAや教育資金贈与などの利用は相続税対策にもなるとして人気化しました。しかしそこには単なる節税だけではなく、やはり孫への思いというものがあります。
また、特に環境問題が象徴的ですが、今の世代が子孫の未来を奪うようなことがあってはなりません。
子や孫の世代ことを考えれば、年金制度維持のために給付が調整されることにも理解ができるのではないでしょうか。
まとめ
現受給世代の年金減額は将来世代への相続
マクロ経済スライドとは
すでに受給している世代にも影響
現役続行による厚生年金の減額
子や孫の世代のために