年金 の給付には保険料の支払いという当然の前提があります。しかし払い手の支払い能力が十分でなくなったとき、保険料に今の暮らしが圧迫されるような本末転倒をおこさないための救済措置があります。その対象となる資格があるかを割り出す 計算 の式と救済措置について説明します。
この計算で判定できる年金保険料免除資格
上がり続ける納付額と負担感
年金の保険料は平成16年度に決められた保険料に基づいて毎年計算され決められています。この計算には物価変動率と実質賃金変動率が含まれており、市場経済の状況もある程度反映されてています。
しかし実際にはこれまで国民年金の保険料はずっと上がり続けてきました。平成23年度に前年より80円下がったのが唯一の例外で、基本的には今後も下がる可能性より上がる可能性のほうが高いと考えられます。
このような見通しの中、いま目の前の暮らしに精一杯で、保険料の納付が大変な重荷になっているという世帯も少なくありません。
特に自営業やアルバイトなどの場合は全額自己負担かつ保険料が固定されている国民年金であるため、会社負担分がある厚生年金と違って家計の圧迫要因となります。
また現在は厚生年金の人も定年退職によって会社負担分がなくなった時には、この負担感をしみじみと味わうことになるかもしれません。
前納や口座振替による納付額圧縮
平成28年度の年金保険料は前年度から670円アップの16,260円となりました。年間にすれば195,120円になります。一般的な家計にとってこの金額は決して軽くありません。そこで設定されているのがまとまった額をあらかじめ納付することで割り引く前納です。
前納には6カ月分前納の現金納付から2年分前納の口座振替までの全部で5段階の方法があります。平成27年度の例でみると、最も割引率の大きい2年分前納口座振替ではトータルの納付額を15,360円も圧縮することができます。
その次に割引率の大きい、1年分前納の口座振替の場合の圧縮額が3,920円であることを考えると、2年分前納の割引率がいかに大きいかがわかります。
払いたくても払えない現実
前納での納付は割引の恩恵を受けられるというものの、実際にはかなりまとまった額の現金を先払いしなければならないため、実情は経済的な弱者にとっての救済措置というよりむしろ余裕ある世帯にとってのメリットにすぎないと言えます。
多くの家計にとって納付は軽からざる負担になっていることは間違いありません。また失業などにより不本意にも支払い能力を失ってしまう場合があります。
しかし理由にかかわらず未納はその分将来年金給付を受けられないことに直結します。そこで設けられたのが年金保険料の免除や猶予制度です。申請をしてこの制度を使えば当面の負担は軽減されます。
保険料免除資格を割り出す計算式
保険料の免除は失業などのほか、仕事はあっても低収入など、経済的事情がある場合に申請し認められれば適用されます。その免除の対象者となるかを割りだせるのが以下の計算式です。
前年の所得がこの計算式によって出た金額の範囲なら対象となります。
- 「全額免除」(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
- 「3/4免除」78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 「半額免除」118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 「1/4免除」158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 若年者納付猶予(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
申請は自分の住民票のある自治体の窓口か、郵送で行います。申請用紙は日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。
未納と免除で分かれる未来
上記の1~5までのどれかにあてはまり、今は免除を受けられたとしても、将来の年金給付にどう影響するのかもまた心配なところです。
しかし結論から言えば未納と免除では将来の結果に天地の差が生まれます。もし無断で未納を続ければ最悪の場合年金は一切受給できなくなります。
一方免除制度を利用すれば最低限の給付は保証されます。上記1~5に対する具体的な支給条件は次のとおりです。
- 全額免除期間については全額納付の場合の1/2支給
- 全額免除期間については全額納付の場合の5/8支給
- 全額免除期間については全額納付の場合の6/8支給
- 全額免除期間については全額納付の場合の7/8支給
- 金額には反映されないが受給資格期間にはカウントされる
(すべて平成21年4月以降の保険料が対象で、それ以前は条件が異なります)
保険料を全く払わないという点では同じでも、未納はゼロ年金、一方全額免除なら半額の年金は確実に給付されるという未来が待っています。
まとめ
この計算で判定できる年金保険料免除資格
上がり続ける納付額と負担感
前納や口座振替による納付額圧縮
払いたくても払えない現実
保険料免除対象を割り出す計算式
未納と免除で分かれる未来