日本は今、人口に対して65歳以上の高齢者が21%を超える「超高齢社会」となり、それによる多くの課題を抱えています。
その一つが介護の問題です。介護現場の人手不足や財政不足など、さまざまな要因もありますが、高齢者の割合が増えたことにより、高齢者が介護をおこなう「 老老介護 」が増加しています。
これにはどのような 問題点 があるのか、詳しく説明します。
増加する老老介護、その背景と問題点について
増加する老老介護
老老介護とは、文字どおり、高齢者が高齢者を介護するということです。これには、夫婦のどちらかが介護が必要な状況となり、その配偶者が介護をするというケースや、兄弟姉妹同士の介護、もしくは高齢者が、自身の父母を介護するというケースがあります。
2013年の統計では、65歳以上の高齢者のみの世帯は、全体の23.3%を占めています。また、要介護認定を受けている65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、約半数が老老介護で、約3割が75歳以上同士というデータがあります。そして、これらの割合は年々増加傾向にあります。
日本人の平均寿命は、男性が80.50歳、女性が86.83歳(平成26年簡易生命表の概況による)で、今後も延びていくと予想されています。
介護を必要とせず自立した生活を送ることのできる健康寿命との差は、男性で約9年、女性で約12年あり、この差が今後拡大していけば、介護を必要とする人も必然的に増加していくことになります。健康寿命を延ばし、平均寿命との差を縮めていくことも、今後の課題の一つです。
なぜ老老介護になってしまうのか
一昔前までは、2世帯、3世帯同居が一般的でした。そのため、家族の中で介護が必要な人がいると、子どもや孫世代が交代で面倒を見ていました。しかし、時代の変化とともに核家族化が進み、高齢者だけで生活する世帯が増えていきました。
子どもがすぐ近くに住んでいて、すぐに駆け付けられるということでもない限り、高齢の夫婦同士で介護せざるを得ません。ではなぜ、介護サービスなど公的なサービスを利用しないのでしょうか。それには、二つの理由が考えられます。
一つは、経済的な問題です。老後の生活にじゅうぶんな貯金があるという高齢者は、実は一部に過ぎません。多くの人が、年金を頼りに生活しています。したがって、施設に入るのが経済的に難しいという人が多いのです。
低料金で入れる特別養護老人ホームは、入居希望者も多く、要介護度が高くないとなかなか入ることができません。しかし、デイケアやデイサービスなどを利用すれば、低料金で、介護の一部をプロに任せることができるので負担を減らすことができます。
この制度を知っていてもあえて利用しないという人も多く、それには二つ目の理由が関係しています。それは、家族だから自分で面倒を見るべきだという価値観、思い込みです。
特に80歳前後の世代は、苦しい時代を乗り越えてきた経験から、人に頼らず自分で頑張ってしまうという傾向があるようです。老老介護の増加の背景には、単に高齢人口の割合の増加だけではなく、このような経済的、さらに彼らが育ってきた時代背景も関係しているのです。
老老介護の問題点
老老介護の一番の問題点は、共倒れになる危険性があるということです。高齢になれば、健康上何かしらの問題が出てきてもおかしくないですし、体力も落ちていくのが普通です。しかし介護には、とにかく体力が必要とされます。
介護を仕事としている人たちの職業病は腰痛だと言われているほどですので、高齢者にとっては相当な負担であることは当然です。しかも、夫婦二人きりの世帯では、代わりがいません。
元気な高齢者が多いとはいえ、介護をしていくうちに自分自身が病気になったり、認知症を患ったりというケースもあります。いわゆる「認認介護」で、老老介護の中でも、介護する側、される側双方が認知症という状態です。
認知症患者数も年々増え続け、2025年には700万人に達するという予想もあります。要介護になる原因でもっとも多いのが認知症ですので、認認介護も今後増加していくと考えられます。認認介護になると、介護自体が適切に行われないという問題も出てきます。
周囲との関係をうまく維持できずに孤立していき、最終的に孤独死に至るケースや、最悪の場合は介護殺人や無理心中などの悲しい事件も実際に起こっています。老老介護が増えるということは、このような問題も増えていくということなので、早急に対策を講じる必要があります。
まとめ
増加する老老介護、その背景と問題点について
増加する老老介護
なぜ老老介護になってしまうのか
老老介護の問題点