人は年齢とともに身体機能が低下し、いずれは人の介護を受けて生活せざるを得なくなる場合があります。
かつて三世代家族同居の頃は、家族の誰かが高齢者の介護を支えてきましたが、核家族化や少人数家族の増加など、社会状況の変化に伴い、介護の担い手が不足していると言われ、施設における介護は非常に重要な高齢者対策のひとつになっています。
今回は、施設サービスの中心的施設と言える 特別養護老人 ホーム についてご説明します。
介護保険制度における特別養護老人ホームの概要
介護保険制度の基礎知識と特別養護老人ホームの位置づけ
平成12年度にスタートした介護保険制度では、要介護者(原則65歳以上で介護の必要な方)に対して、介護サービス事業者が、要介護者に合わせて作成した「ケアプラン」に基づく各種の介護サービスを提供します。
その後、その費用の9割は介護保険財政(国・地方・保険料)から、残り1割は本人が事業者に支払うとことになります。介護サービスごとの費用は、サービスの種類や量によって、また、要介護度(介護の必要な度合い)によっても異なります。
介護サービスの内容は大きく在宅サービスと施設サービスの2本立てになっています。
在宅サービスは、自宅での生活を基本としながら外部から必要なサービスを受けるというものです。
施設サービスは、3つに分かれており、①「介護老人福祉施設」 ②「介護老人保健施設」 ③「介護療養型医療施設」となります。
そのうち、①介護老人福祉施設とはそれまでの特別養護老人ホームのことです。つまり、介護保険制度により、従来の特別養護老人ホームは「介護老人福祉施設」として介護保険の施設サービスに位置づけられ、現在は介護保険制度のもとで運営がなされています。
ここでは介護老人福祉施設である特別養護老人ホームを説明します。
特別養護老人ホームの入所要件
まず、要介護度は3から5までの人が入所できます。従来は、要介護度1から入所できましたが、平成27年8月からの制度改正によるものです。
ただし、既に8月以前より入所中の要介護1,2の人であっても必要があれば施設を出ていくことはありませんし、入所前の要介護度が1,2の人であっても、家族の状況や重度の認知症などがある場合などは、入所が認められるケースがあります。
居住環境
居住環境については、介護老人保健施設と同様に、古い施設から新しい施設まで、時々の国の指導により多少の違いがあるとお考えください。
例えば、多床室(4人部屋など)、従来型個室、ユニット型準個室(多床室を改装した居室を10室ごとに入所者をひとつのまとまりとしてケアする)、ユニット型個室(居室を10室ごとに入所者をひとつのまとまりとしてケアする)などに分かれています。
当然、居住費は個室(従来型個室を除く)の方が多床室の場合より高くなります。どの部屋への入所が適当か否かは、入所者の状態、他の入所者との関係性などもあり、施設と十分相談の上、判断していきます。(施設に空きがあることが前提です。)
特別養護老人ホームは「生活の場」
特別養護老人ホームは、いわゆる「生活の場」としての位置づけです。生活の場ですので、通常の介護は必要ですが、特別な医療を必要としない方が入所し生活を送ります。
入所中は、入浴・食事・排泄の介助、医療機関への同行、徘徊への対応、必要な機能訓練など、日常生活上のケアを受けることになります。
介護を充実させるため、介護職員数は基本31名とされており、夜勤も行っています。
高齢の要介護者が多く入所する施設ですので、医師1名(非常駐嘱託医)や看護師3名など、医学的な処置等が必要な場合の体制はとっております。
しかしながら、あくまで生活の場ですので、何らかの医学的な必要性があれば施設から適当な医療機関へと移ることになります。そして、回復すれば再び特別養護老人ホームへ戻ることになります。
このように医学的管理の有無が、他の施設サービスである介護老人保健施設と介護療養型医療施設との大きな違いとなります。
月額費用(自己負担)
費用は、入居する部屋の種類や受けるサービス内容にもよりますが、概ね約8万円から14万円程度となっています。ただし、入所者の世帯の所得に応じた減免措置や高額介護サービス費などの負担軽減措置も用意されています。
要介護者の身体・生活の状況、経済状況、家族の状況など、遠慮なく施設の介護支援専門員(ケアマネージャ)と相談されることをお勧めします。
まとめ
介護保険制度における特別養護老人ホームの概要
介護保険制度の基礎知識と特別養護老人ホームの位置づけ
特別養護老人ホームの入所要件
居住環境
特別養護老人ホームは「生活の場」
月額費用(自己負担)