親、子、孫が、必ずしも年齢順に亡くなるとは限りません。また、本来なら法定相続人であるべき血縁の人が何らかの理由で相続の権利を持てず、世代を飛び越えて相続が行われることもあります。このようにして起こる 代襲相続 において考えられるリスクについて解説します。
代襲相続が生む棚ボタ相続人・青ざめる相続人
▽ 目次
亡くなった時点で決まる数次相続と代襲相続
被相続人(財産を持っている人)が亡くなった直後、遺産の分割が決定しないうちに相続人のうちの一人が亡くなってしまったとき、代わって相続人となるのはこの亡くなった相続人の配偶者と子供です。
一方、被相続人よりも先に相続人のひとりが亡くなっていた場合は、相続人となるのはこの亡くなった相続人と血のつながりがある子供だけになり、配偶者は相続人にはなれません。
前者が数次相続、後者が代襲相続です。代襲相続は直系血族なら代々受け継がれるため、仮にこの代襲相続人までもが死亡したとしてもこの人にさらに子供、つまり大元の被相続人にとってのひ孫がいればそれが代襲相続人となります。
相続人が養子で、かつ被相続人より先に亡くなった場合
養子縁組により親子となった場合でも相続関係は成立します。しかし、その養子が被相続人よりも先に亡くなってしまった場合、やはり代襲相続が発生するのかというと、ここでも時間的要素が決定的に重要になってきます。
それは、被相続人と相続人が養子縁組をした時点で相続人にすでに子供があったのか、それとも養子縁組後に子供ができたのかという違いです。
前者の場合には相続人の子供は被相続人の直系の子供とは認められないため、法定相続人にはなれません。したがって代襲相続が起こるのは後者の場合のみとなります。
代襲相続が起こるその他の原因と遺留分
代襲相続が起こる原因は必ずしも親より子が先に亡くなる逆縁的原因だけでなく、相続人の犯罪行為などを理由とする相続欠格や廃除といって、被相続人が相続をさせないよう意図した結果起こるケースもあります。
ただこの二つには違いがあり、廃除より社会的影響の大きい相続欠格では「遺留分」というものが認められません。
遺留分とは、相続人に最低限認められた相続の権利です。遺言書などで相当強固に相続の権利喪失を求めてあっても、廃除であれば最低限の遺留分は認められる可能性があります。
「笑う相続人」なのか「青ざめる相続人」なのか
遺言書などを残さずに被相続人が亡くなってしまった場合、法定相続人を確定させるために被相続人の戸籍を調べる必要が出てきます。その結果、たとえば家族である相続人が知る由もなかった相続人の存在が明らかになる場合もあります。
それはかつて離婚し前配偶者との間にできた子供や、あるいは認知した婚外子であるかもしれません。そのような未知の法定相続人候補が存在した場合、代襲相続という制度が思わぬ相続人を生むことになります。
例えば以下のような相関関係の場合です。被相続人がA、相続人候補はその息子Bとその家族だったとし、Aより先にBが亡くなったとしたら、本来Bが相続すべき遺産はBの配偶者にはいかず、彼の子供が代襲相続します。
この時点でAの戸籍調査をした結果、婚外子Cがいたことが判明すると、このCに、にわかに代襲相続の権利が舞い込むのです。BとCの関係性が薄ければ薄いほど、婚外子Cにとっては故人Bの死を悼む気持ちより、思わぬ財産が手に入った喜びのほうが大きいでしょう。
このような相続人は「笑う相続人」といわれ、被相続人にとってもその遺志に添わぬ状況をもたらすことになります。このような棚ボタ的相続がある一方、まさに代襲相続がもたらす青天の霹靂ともいうべき事態も考えられます。
それは調査により突然代襲相続人とされたものの、その遺産とは故人の膨大な借金だったというケースです。この場合は前例からは一転して負の遺産をむりやり引き継がされる「青ざめる相続人」とでも呼ぶべき存在となってしまいます。
「自分が相続人であることを知ったとき」の証明
「青ざめる相続人」になってしまったとき、真っ先に取るべき行動は相続放棄の手続きです。ただし、資産であれ借金であれ、自分が法定相続人であることを認知していながら3カ月以内に手続きをしなければ放棄は認められなくなります。
ここで注意すべきは「自分が相続人であることを知ったとき」から3カ月以内という規定です。これは故人の死を知った時点とは必ずしもイコールではありません。正であれ負であれ、何らかの相続が発生することを認識した時点からの3カ月です。
しかしそれを客観的に証明することができなければなりません。通常の肉親間の相続ならいざ知らず、特殊な代襲相続においてそれを証明することは容易ではないでしょう。ここに至ってはもはや専門家の門を叩くことが最善です。とくに負債が巨額なら迷うことない早い対処こそが肝心です。
まとめ
代襲相続が生む棚ボタ相続人・青ざめる相続人
亡くなった時点で決まる数次相続と代襲相続
相続人が養子で、かつ被相続人より先に亡くなった場合
代襲相続が起こるその他の原因と遺留分
「笑う相続人」なのか「青ざめる相続人」なのか
「自分が相続人であることを知ったとき」の証明