介護を知らない人は、「レクリエーション」にどのようなイメージを持っているでしょう。「お年寄りの遊び」「趣味の時間」でしょうか。 レクリエーション は、 介護 を受けている高齢者にとって「部活」です。中学生のように本気で喜び悔しがります。
介護員も、一緒になって楽しみ、利用者さんが満面の笑みを浮かべると、心の中でガッツポーズです。
レクリエーションは介護高齢者の「部活」、介護員の「充実」
介護員の「本分」です
レクリエーションは、「なんとなくの趣味の時間」ではありません。介護員は、「利用者さんがやりたいって言うなら、企画しますけど…」という態度ではいけません。
介護保険制度において、レクリエーションは介護員の「正規の仕事」です。デイサービスでは、入浴や、昼食や、オムツ交換と同等の「正規のサービス」です。
老健や有料老人ホームなどの施設も、行政から「入居者にレクリエーションを提供するように」という指導を受けています。レクリエーションは「介護の本分」なのです。
これがレクリエーションの定番
レクリエーションで最も有名なメニューは「段ボール魚釣り」でしょう。段ボールを魚の形に切り取り、その先端に小さな磁石を付けます。
次に、新聞紙を棒状に丸めて「釣りざお」つくり、裁縫用の糸を付けて、糸の先に、やはり磁石を付けます。段ボール魚を床に置き、高齢者に釣りざお持ってもらい、2つの磁石をくっ付けて釣り上げるゲームです。
「風船バレー」も定番です。10人程度の高齢者を2グループに分けて、間に「ネット」を置きます。普通のバレーボールと同じ形態です。ルールもバレーボールと同じでOKです。
違いは、ボールの代わりに、風船を使うことです。風船なら、強烈アタックも、鉄壁ブロックも、お年寄りを傷つけることはありません。
家族の偏見、疑問を持つ介護予備軍も
手芸や塗り絵、折り紙も、介護施設などのレクリエーションで頻繁に行われます。でもこれらは、幼稚園や保育園でもやっています。それで、「うちのお父さんにそんなことをやらせたくない」という家族は多くいます。
また、「介護予備軍」の中高年も、「体が動かなくなったら、介護を受けるのは致し方ないが、あのレクリエーションってやつだけは御免だ」と思う人がいます。
こうした人たちは、介護の現実をご存じないので、レクリエーションを「子供だましのお遊戯」と考えてしまうことがあります。しかし、それは偏見です。レクリエーションをやっているお年寄りも、レクリエーションを企画した介護員も、真剣に取り組んでいます。
魅力はリハビリ効果だけではない
ゲームをやると、高齢者は全身の関節と筋肉を使います。点数が入ったり、失敗したりすると、大きな声を出します。これは肺の機能を鍛えます。細かい作業は、指先を動かします。知恵ゲームは、脳の活性化になります。レクリエーションには、リハビリ効果が期待できます。
リハビリ効果が表れると、介護予防になります。介護予防は、介護サービスの提供を減らしますので、介護保険の財政を助けます。
レクリエーションのメリットは、これだけではありません。介護という仕事は、弱りゆく人を見守る仕事がメーンになります。医療は、死までの時間を延長することができますが、介護は、死を見届けることしかできません。介護員自身の関与によって、高齢者の体調が改善することはまれです。
ですので、介護を受けている高齢者にリハビリ効果が表れると、介護員のモチベーションが上がります。
しかし、レクリエーションの真の狙いは、それらではありません。レクリエーションの目的は、「生きる喜び」なのです。
「暇な時間」に差す光
介護を受けている高齢者は、「暇」に苦しんでいます。自宅にいる介護高齢者も、介護施設にいる高齢者も、毎日「この暇をどうやってつぶそうか」と悩んでいます。
高齢者の楽しみは、3食と入浴以外は、テレビしかないからです。通院すら楽しみにする高齢者がいるのです。
そういった介護高齢者にとって、レクリエーションは、待ちに待ったイベントなのです。人の生活には、「待つ」が必要だと思います。
若い人には、「夏休みを待つ」「給料を待つ」「結婚を待つ」など、「待つ」ことが数多くあります。「待つ」ことは、「生きる喜び」なのです。
しかし介護高齢者は「待つ」ことが、極端に少ないのです。レクリエーションは「待つことができる」数少ないイベント、つまり「生きる喜び」なのです。
それで介護員も、全力でレクリエーションを盛り上げるのです。
まとめ
レクリエーションは介護高齢者の「部活」、介護員の「充実」
介護員の「本分」です
これがレクリエーションの定番
家族の偏見、疑問を持つ介護予備軍も
魅力はリハビリ効果だけではない
「暇な時間」に差す光