介護保険制度を利用するためには自治体の窓口や地域包括支援センターに申請し、認定審査を受ける必要があります。この時、実情に沿わない不本意な判定をされないために注意すべきこと、またいったん 要介護認定 を受けた後に気をつけておくべきことなどについて解説します。
適正な要介護認定を得るための審査の受けかた
介護状態区分の概要
厚生労働省は、「要介護認定に係る法令」において介護状態区分の基準を定めています。これは介護にかかる時間を尺度としたもので、基本的には介護により多くの時間が必要なほど、重度の要介護認定がなされることになります。
区分は軽度なほうから順に要支援1、要支援2、そして要介護1から要介護5までの全部で7段階に分かれています。このうち、大雑把に言えば、要支援1、2まではなんとか日常生活が営める状態の区分、そして要介護1以上からは日常生活において何らかの介助が必要な区分となります。
「認定調査票」の構成
第一段階の認定調査は、全国一律の調査票をもとに調査員が訪問して行います。調査票は「身体機能・起居動作」、「生活機能」、「認知機能」、「精神・行動障害」、「社会生活への適応」、「過去に受けた特別な医療について」の6項目と医師による意見書などで構成されています。
各項目中にはさらに細分化されたチェック項目があり、それぞれについて該当するか否かでチェックしていきます。調査を受ける側としては、各項目に対して単にマルかバツかだけで回答しないことが肝要です。
例えば身体機能のなかの視力ついて答えるとき、チェック項目にはどの程度見えるかの判定しか設定されていません。たとえば、普段は見えていても日によってはよく見えないこともある、という事実があるなら、その具体的な情報を必ず伝えるようにするべきです。
特記事項へ記載してもらうことがポイント
訪問による認定調査は基本的に1回限りで行われます。そして認定調査票はまずコンピューターで判定されます。もし調査当日たまたまいつもより調子がよく、調査員がその印象を加味してしまえば、あとはそれに対して機械的な判定が待っているだけということになります。
そこできわめて重要になってくるのが「特記事項」です。これは調査員が特筆すべき補足情報を記述するスペースで、コンピューター審査後の人による認定審査会で大いに参考とされる情報です。
特記事項の記述には、マルバツ式の機械的判断からは読み取れない、介護における個人差を伝える役割があります。
そして特記事項は、介護の必要性のボーダーラインにある軽度な認定ケースにおいてより重要になってきます。
たとえば、チェック項目で歩行が「できる」、とされていても、非常に緩慢にしか歩けないとしたら、そこにはやはり介助が欠かせないという判断になることも十分に考えられるからです。
家族のためにも必要な適正な要介護認定
要介護認定がなされた後に注意しなければならないのが認定の更新です。原則6か月間の有効期間満了までに新規申請と同じ手続きを踏みます。
ただしこの更新審査の結果、介護度が変わる可能性があります。それが被介護者のいまの状態を正しく反映したものなら問題ありませんが、新規申請時と何ら状態が変わってもいないのに更新審査で軽度の判定をされたりすることも考えられます。
これには要介護者のプライドが関わっている場合もあります。つまり審査員という他者の目に対する見栄や虚勢が元気なふりをさせたりすることがあるということです。そのためにも認定調査には家族が必ず立ち合い、調査員に介護の手間の実態を正確に伝える必要があります。
認知症などで医師による意見書が必要な場合も同様で、その認知症の影響で家族が日々どのような介護上の苦労を強いられているかを説明しておけば、意見書の記述も変わってきます。
特に自宅介護においては家族の負担は少なくなく、認定の軽重は本人より家族にこそ大きな影響を与えます。介護はまさに千差万別。要介護者の体重が重く、介護者がとても非力だとしたら、平均的な場合より苦労は大きいはずです。
認定審査の時間帯によっても要介護者の状態は変わるでしょう。それなら訪問時間を調整してもらうというテクニックも使うべきです。第三者にはわからないそれぞれの介護の実情を理解し、適正な介護認定をしてもらうことこそが本人にも家族にとっても肝心です。
まとめ
適正な要介護認定を受けるための審査における注意点
介護状態区分の概要
「認定調査票」の構成
特記事項へ記載してもらうことがポイント
家族のためにも必要な適正な要介護認定