親の面倒はすべて同居の長兄にまかせ、自分たちはほとんど何もしてこなかった。たとえばそんな兄弟たちが、兄にすべての遺産を相続してもらいたいと考えたとき、 遺産 分割 協議 により全員が合意することで、法定割合に縛られない思い通りの遺産分けを実現することができます。
全員一致ならどんな分け方も自由にできる遺産分割協議
居住中の家が財産のほとんどなら
預貯金も多少はあるが、財産のほとんどは現在居住中の自宅、というのが最も多く見られるパターンです。この場合、被相続人が亡くなったことで空き家になってしまうなら、この家を売却して現金化し、相続人の間で分割することができます。
しかし売却金額には税金がかかり、不動産取引の手数料もかかります。そして現金化した分割分には通常の相続税も課されます。しかし、この家に被相続人の配偶者など、まだ同居者が存在している場合、この家に引き続き居住することを前提に、相続税を大幅に減免する措置があります。
これを小規模宅地の特例といい、居住していた土地のうち330㎡以下の部分について、その評価額が8割減免されます。仮に評価額1億の土地ならば、このうち2割に相当する2,000万円に対してしか課税されなくなりますので、相当な節税の恩恵を受けることができます。
ただしこの同居人が相続人のなかの一人、たとえば被相続人と同居していた長兄という場合には、長兄が家を相続するかわりに、他の兄弟には長兄から現金で分割相当分を支払う代償分割という手続きをとらなければならない場合もあります。
認められにくい介護の貢献
例えば長兄が、長年にわたって親を介護し、他の兄弟はほとんどそれを手伝うことがなかったというような場合、被相続人に対する兄の介護が財産の維持増加につながったとしたら、それは「寄与分」として考慮されるべき、と民法で規定されています。
しかしこれは、通常の親子関係からみて当然なされるべき範囲の介護と見られることもあり、特別に寄与したといえるのかどうかの判定は必ずしも簡単ではありません。
そこでこの寄与分についてはやはり相続人どうしの協議によって決められることになります。そして全員一致が原則の分割協議において、特定の相続人の取り分を増やすことになる寄与分の判定は必ずしもスムーズに行われるとは限りません。
これが原因で争いが起こることも少なくないため、現在、介護の貢献は相続に反映させるべきという意見が政策の場でも協議され始めています。
「遺産放棄」という意思表示
相続放棄という言葉があります。これは主に借金などマイナスの遺産を引き継がないようにするために相続の権利そのものを放棄してしまうことです。そして相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要です。
一方、遺産放棄は手続き不要で、遺産のすべてまたは一部についての相続を放棄することができます。たとえば長兄が家を相続し、他の兄弟は家に関しての相続を放棄し、現金だけを相続するというような場合がこれにあたります。
そして法律上は同じ割合で相続の権利があっても、それには関係なく兄弟間の話し合いで決めた取り分で相続することができます。
つまり相続の権利を残したまま、特定の財産についての相続だけを放棄するのが遺産放棄ということになります。そしてこの遺産放棄においてもやはり念のために遺産分割協議書を作成し、相続人全員が合意した証拠を残しておくことが肝心です。
分割協議を争いの場にしない
相続を巡って相続人の間で不信や不満があれば、分割協議は権利の主張や非難の応酬など、不毛な争いの場と化してしまうかもしれません。そうなれば最終的には裁判所による審判で解決しなければならなくなります。
しかしその結果は、結局のところ法定割合に基づく分割で決着することがほとんどです。しかし相続人同士が円満な関係なら、むしろ法定割合とは無関係の柔軟な配分で、現実に即した理想的な相続が可能になります。
その前提となるのもすべて話し合いです。相続は心の問題です。そのことを念頭におき、分割協議を争いの場にしないことが求められます。
まとめ
全員一致ならどんな分け方も自由にできる遺産分割協議
居住中の家が財産のほとんどなら
認められにくい介護の貢献
「遺産放棄」という意思表示
分割協議を争いの場にしない