遺産相続のトラブルは自分には無関係と思っていても、将来想定外の状況変化が起こらないとも限りません。相続人同士の人間関係も何かのきっかけで変化してしまうことがあるかもしれません。そこで、 遺産 相続 を遺産「争続」にさせないためのポイントについて説明します。
揉めない遺産相続のポイントは透明性と被相続人の意思
事前に取り決めしておくことは有効か
被相続人(いま財産を持っている人)が生きているうちに相続人同士であらかじめ取り決めをしておけば、いざ相続が開始されたとき揉めずにすむ、という考えには根本的な誤解があります。なぜなら被相続人の生前時点ではまだ相続人は確定していないからです。
被相続人より先に相続人候補が亡くなる可能性もないとは言えません。また、たとえば相続人候補の二人の兄弟がいて、そのどちらかが被相続人の死後直後に亡くなった場合、相続の権利は未亡人となった配偶者と子供に移ります。
もし子供が二人いれば相続人は差し引き二人増えることになり、事前に決めた配分比率の見直しを余儀なくされるばかりか、あらためて相続人となったこの3人が、思わぬ主張をすることも考えられます。
相続に関する手続きには期限がある
被相続人が亡くなり、いよいよ相続を開始するとき必要となるいくつかの手続きがあります。なかでも相続税の申告は重要です。期限は被相続人の死を知った日の翌日から10カ月以内と決められています。
そして相続税には特に不動産において大幅な軽減措置があり、その措置を受けるためには期限内に申告をしなければなりません。もし、相続人同士が揉めて決着がつかず、この申告期限に手続きが間に合わなければもちろん100%課税という結果が待っています。
一方、他意なく無欲に財産放棄する意思を示していたとしても、実はこれにも手続きが必要で、自己のために相続開始を知ったときから3カ月以内とされています。ここで注意すべき非常に重要なことは、相続には借金などの負の財産の相続もあるということです。
負の財産の存在を知らないまま財産放棄の意思表示だけして安心していると、手続き期限の3カ月を過ぎてから突然負債の返済を求められるという事態が起こり得るのです。
また、不動産資産などの名義変更手続きには期限はありませんが、被相続人名義のまま放置していると、他の相続人の同意なしに処分したりできず、せっかく現れた土地の買い手を逃がすなどということにもなりかねません。
財産目録を共有し透明性を確保する
相続財産には何がどのくらいあるのかを相続人全員が平等に把握しておくことはトラブルを回避するための第一歩です。そのためにも被相続人が財産目録を整備し、常に更新しておくことは重要です。財産の全容をガラス張りにすれば、少なくとも疑心暗鬼の種は払しょくされます。
生前贈与や教育資金の提供なども開示されればなお公平性は高くなるでしょう。また、自身で葬儀費用を負担しようと考えている場合には、そのことを相続人全員が一見してわかるようにしておくべきです。
たとえば父の死後長男が、遺志に従い父の口座から葬儀費用を引き出した場合、そのことを他の兄弟が知らなければ、兄が無断でまとまった金額を引き出したと誤解される恐れもあるからです。
最優先される被相続人の意思
法定相続人どうしが争うわかりやすい原因のひとつが不平等・不公平というものです。そこへさらに、どちらがどれだけ介護に関わったかなどの心情的主張もからんでくる場合があります。
互いの主張にどれだけ言い分があったとしても、争えば最終的には裁判所によって審判されて判断がくだされてしまいます。争いが長期化すればその間のコストや時間や精神的負担は少なくありません。そのような不毛を防ぐためにも遺言書は重要です。
遺言書は相続において最優先されるからです。また生前贈与のような節税対策や受取人を指定できる生命保険への加入なども可能な範囲でしておけば後のトラブルのもとを取り除くことになります。
これらはいずれも被相続人の意思なしには行えません。相続においては被相続人の役割が大きいのです。
まとめ
揉めない遺産相続のポイントは透明性と被相続人の意思
事前に取り決めしておくことは有効か
相続に関する手続きには期限がある
財産目録を共有し透明性を確保する
最優先される被相続人の意思