日本の 年金 構造は、複数の若者で1人の年寄りを支えていた胴上げ型からまもなく、1対1で支えるおんぶ型の時代に突入します。こうして制度破綻の懸念が台頭する一方、滞納者包囲網はタイトになってきています。滞納で財産の 差し押さえ に至るプロセスとその対策を解説します。
年金滞納による差し押さえのプロセスと対策
プロセス1-「催告状」
制度破綻を回避するため、低迷する納付率を上げることで年金財政を少しでも改善させようとする取り組みが本格化しています。その具体策が、所得400万円以上保険料13ヶ月以上の滞納者を対象にした強制徴収です。
この対象者にはまず電話や戸別訪問による納付の催促が行われます。これに応じない場合、次に行われるのが「催告状」の送付です。
催告状が送られてくることの意味は、本来設定されている国による徴収権のおよぶ5年間の期限が消滅するということです。わかりやすくいえば、徴収できなくなるタイムリミットを解除し、決着がつくまで対象者の支払い責任を追及できることになるということです。
この第一段階の催告状に無反応だった場合、次に送られてくるのが「特別催告状」です。ここに記載された期限を過ぎて放置した場合には「最終催告状」が届きます。
プロセス2-「督促状」
3段階の催告状の全てを無視した場合、いよいよ差し押さえの要件となる督促状が送付されることになります。督促状に記載の期限内に納付しなければついに差し押さえの執行へと至ることになります。
なお、督促状はいかにも最後通告といわんばかりの真っ赤な封筒で届きます。
プロセス3-「差し押さえ」
年金機構の職員は職権によって銀行預金をはじめとする対象者の財産状況を調査することができます。それにより洗い出された現金預金、株や投信などの金融財産のほか、自動車や土地などが差し押さえられます。
もし対象者本人にほとんど財産がない場合、同居する世帯主や配偶者などの連帯納付義務者に督促状がとどきます。つまりこれは本人だけの問題にとどまらず、周囲を巻き込む可能性も高いということです。
最低でも意思表示をすること
所得が400万円あるというような人が年金保険料を納付できないような経済状態にあるとは考えにくいですが、何らかの理由で払う余裕がないときはどうすればよいのでしょうか。
実はこの所得400万円とは前年の1月~12月の所得のことです。したがってもし本年の1月に失職し無収入になっていたとすれば、支払いに困窮するということはありえないことではありません。
しかし問題は、納付の意思がないのではなく納付の能力がないことを、少なくとも差し押さえ以前のプロセスのどこかで表明できていたかということです。
年金の納付には免除制度というものがあります。その手続きをすることが一番の具体的な意思表示になりますが、少なくとも督促状以前までの段階で相談の電話一本でも入れるだけでも事態は大きく好転する可能性があります。
また、支払い能力の問題で免除手続きをすることになった場合、所得条件によって免除額は全額免除~1/4免除までの4段階に分かれることになります。ただしここでも本人のみならず連帯納付義務者の所得も対象になるので注意が必要です。
申請によって保険料が免除された場合、国が免除分の半分を負担してくれることになります。それはつまり、この免除期間も将来の受給条件年数に算入してもらえるということです。ただし、納付を免除された分、支給金額も少なくなることは覚悟しておかなければなりません。
マイナンバー制度の導入により、今後はよりリアルな個人の経済状況が把握されることになっていきます。滞納はますます許されない時代が近づいています。
まとめ
年金滞納による差し押さえのプロセスと対策
プロセス1-「催告状
プロセス2-「督促状」
プロセス3-「差し押さえ」
最低でも意思表示をすること