だれにも予測できない死。にもかかわらず財産がある場合、相続という問題が待ったなしでせまってきます。そこで、計画的かつ遺族にとって有益な相続を実現するためにも、 孫 への 相続 というものをうまく活用する方法がないかを検証します。
孫への代飛ばし相続で相続税は節税できるのか!?
代飛ばし相続は税率が高い
被相続人に子供と孫がいる場合、通常はまず法定相続人である子供が財産を相続します。しかし節税目的などで、孫に直接相続をさせる場合もあります。
ただしこれは税金面では通常の相続と同じように処理されません。なぜなら被相続人→子供→孫という通常の相続経路なら2回徴収できるはずの相続税が1回分なくなってしまうからです。したがってこの場合には2割増しの相続税が課せられることになります。
しかしそれでも、相続回数が減ることによる節税効果は十分あり、また法定相続人である配偶者や子供の課税対象財産を減らすメリットもあります。
教育資金一括贈与についての正しい理解
相続が節税目的ばかりでなく、孫本人にとっても有益なものになるならそれに越したことはありません。孫を持つ被相続人のこのような心理を大いに刺激したのが、1,500万円まで非課税となる、教育資金の一括贈与制度です。
110万円以内なら非課税となる暦年贈与にも制約をあたえることなく利用でき、また平成30年度末までの時限制度ということもあって、制度開始の平成25年当初は大人気となり多くの利用申し込みがありました。
しかしこのような、用途を限定したいわばひもつき制度は、本来利用者本位ではありません。なぜなら教育資金だけに1,500万円もの大金を使い切ることは実際には容易なことではないからです。
そしてもし使い切れなければその分は課税対象となってしまい、節税メリットはなくなってしまいます。また、1,500万円というのはあくまで利用の上限額に過ぎません。
「一括」という言葉に惑わされず、この範囲内なら必要な時期に必要な額ずつ贈与しても課税対象にならないということを知っておくべきです。
「3年以内」が適用されるかされないか
相続開始から過去3年以内は、たとえ非課税の暦年贈与の範囲内であっても、すべて相続税の課税対象に算入されるというルールがあります。ただしこれは、贈与の相手が相続人の資格のない孫である場合には適用されません。
そのため、孫への暦年贈与は人数×最大330万円の節税効果をもたらせる可能性があります。ただし、たとえ相手が孫でも養子縁組による相続の場合は適用されません。
孫との養子縁組は法定相続人の人数を増やし、相続税の免税範囲を広げるために利用されるケースが少なくありません。
しかし、例えば祖父が孫と養子縁組した場合、孫は自分の親や祖母と同じ法定相続人の資格を得ることになるため、3年以内に行った暦年贈与は非課税とはならなくなります。
また、法定相続人であった孫の親が被相続人よりも先になくなってしまった場合、孫が代わって相続する代襲相続が起こります。この場合にも3年以内の算入ルールは適用されます。
相続時精算課税制度の注意点
直系親族限定の、最大2,500万円まで無税となる相続時精算課税を利用する節税も考えられます。ただし、贈与した財産はそのとき非課税でも、最終的には相続が発生したとき残っている財産と合算して計算しなくてはなりません。
したがって、その合計額が基礎控除の4,200万円を上回った分に対しては相続税が課税されます。そしてもしこの制度で孫に贈与をしていると、養子縁組か代襲相続でない限り、孫自身には相続税はかかりませんが、他の法定相続人がこの分を負担しなければならなくなります。
またこの制度は暦年贈与とひきかえに選択できる制度であり。いったんこれを選択すると元に戻すことはできなくなります。
それでもメリットがあるのは、将来的にかなり値上がりする可能性の高い株などのような資産をいまの時価で贈与する場合です。将来もしもその価値が数倍になったとしたら、大幅な節税ができたことになります。
しかし値下がりリスクも同時に存在するような資産の性質を考えると、これに当てはまるケースは決して多くないと言え、すでに2015年に改正された相続税制においてはこの制度を選択するメリットはかなり限定的といえるかもしれません。
節税より投資
孫への相続を節税の方法にするのは悪いことではありません。しかしそれが裏目に出る可能性はゼロではありません。それを避けるためにも諸制度を正しく理解して活用すれば、遺族の円満な相続を助け、孫の将来に対する非常に価値の有る「直接投資」にもなりうるのではないでしょうか。
まとめ
孫への代飛ばし相続で相続税は節税できるのか!?
代飛ばし相続は税率が高い
教育資金一括贈与についての正しい理解
「3年以内」が適用されるかされないか
相続時精算課税制度の注意点
節税より投資